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Ikebana therapyいけばな療法

お花を触って大喧嘩の巻

2019.04.29

とても綺麗なピンク色のストックを選択された方です。
認知症もあり、ちょっとしたことで不機嫌になられます。
でもいつもそうではありません。その日によってご様子は違います。

 

その日はたまたまでしょう。お隣の方が何気なく花を触られたことに腹を立てられました。

「私の花、勝手に触らんといて!けったいな人やな!」とテーブルを叩かれました。
触った方もぎょっとして「ちょっと触ったぐらいで何やの!」と。
周りがしんとなるような喧嘩になりました。

 

私がお二人の間に身をおいて怒っておられる方に

「お花触られて嫌だったんですね。わあ。凄く綺麗なストックですね。一緒に触ってもいいですか?とても可愛いお花を選ばれましたね!」と言ってお花を触らせて貰いながら

「ストックは凄く香りがいいんですよ。」と一緒に香りを確かめ合いました。

 

 

ストックの香りは優しく甘く、幸福感を与えてくれるような香りです。少しずつ心が和んでこられました。

じっくり、ゆっくり、触ったり、香りを嗅いだりしてお花を味わいながら、そのストックの「素敵」を感じていただきました。

 

「お隣の方が触りたくなったのは、こんなに素敵なお花を選ばれたからですね。」とお話しすると
「そうやろ。ほんまに、いい花を選んだわあ。」と誇らしげにお花を生け始められました。

 

そして、花を触った方には
「綺麗なお花ですからね。触りたくなったんですね。私もお願いして触らせて貰いましたよ。お花が好きなんですね。」とお伝えしました。

「そう!私、お花が大好きですねん。悪気も何もあらへん。綺麗からちょっと触りたくなっただけですわ。」と仰るので「確かに綺麗ですよね。」と頷きながら、こちらの方にも共感をしました。

 

暫くしてお二人は互いの花が完成すると、どちらからともなく

「いい花選びはった。」「うまい具合に生けてはる。」「綺麗。」「綺麗。」と誉め合われました。

花の力ですね!お二人の心を和ませてくれました。

 

「ちょっと触っただけだから許してあげて下さいね。」とか
「それはお隣の方のだから駄目ですよ。」では否定になります。

どんなに優しく語りかけたとしても『あなたは間違っている、こうした方がいい』と教えたり、命令する行為になります。

 

間違っていても『あなたはそんな風に感じたのですね。』とありのままを受け止める会話。
そして、それを一緒に感じます。

「触られて嫌だったんですね。」「触りたくなったんですね。」と。
人は誰でも、自分のことを解って貰えると嬉しいものです。

 

とりわけ高齢者の方は日々の暮らしの中で、共感される喜びを感じるかどうかがとても重要です。
ご自身の尊厳や生きる意欲の基になると思います。

 

お花の時間にそんなものを感じていただけることが目標!です。
また、花を見て、触って、香りを嗅いで、会話を楽しみながら、五感を充分に働かせてお花を感じていただきたいと思います。

 

心理学の学びは高齢者の方との対話にも役立っています。

 

けれど、実は私もつい家族とは「違う違う」と主張し合い口喧嘩になったりします。

ありのままの家族を受け止めることができれば良いのですが。
偉そうなことは言えないです。 まだまだ、修行が足りませぬ。(>_<)