ホーム > 花タスキ > 認知症高齢者様との記録から伝えたいこと!! 「花による認知症ケア写真展 」 2019/10/21(月)~生駒市役所にて

Hanatasuki花タスキ

認知症高齢者様との記録から伝えたいこと!! 「花による認知症ケア写真展 」 2019/10/21(月)~生駒市役所にて

2019.10.22

花タスキと共に「花による認知症ケア写真展」開催

どんなシーンもかけがえのない瞬間です。
認知症であっても、もし、記憶に残らなくても

その人生に輝く時間があることが素敵なことだと思います。

 

 

 

 

高齢者施設で実施している『いけばな療法』の写真展を生駒市役所で開催しております。

お花の時間には本当に色々なことが起こります。
思わぬ生け方をされたり。生けないと仰ったり。他の方と共同作業をされたり。喧嘩が始まったり。誰かの鼻歌から全員で合唱になったり。

その様子をご家族にお渡しするために撮り溜めた写真とメモがあります。
その中から幾つかご紹介させていただいております。

 

 

  

 

 

石化柳が蛇のように曲がっていることから「疎開していた時、長いのがほうててびっくりしました。田舎は蛇が多かったですわ。」と話して下さいました。
目の前の花を見て過去のことを思い出し、そこから様々なことを思い出されていくことがよくあります。
嗅覚と記憶が脳の同じ部位で司られていることから香りからも記憶は蘇ります。
いけばなから回想、感情の広がりを体験していただいてます。

 

 

もし、花を生けた記憶をお持ちでなくても、花を見て、触って、香りを嗅いでおられます。
五感を通して脳は活性化され、沢山の刺激を受けておられます。
その瞬間に嬉しい、楽しいと感じたこと、一日の中に輝く時間があったことがとてもとても大切なことなのです。

 

 

   

 

 

ハロウィンなのでカボチャを花器にしました。
後ろの青いつい立がカボチャの黄色を引き立てていることに気付かれ、指を彩るマニュキュアをかざして「これも引き立つ!」と仰いました。
「綺麗だから次も付けて来て下さいますか?」と言うと指切りをして下さいました。
この約束はもし忘れてしまわれても、私を喜ばすことができる喜びと期待されているという自信を感じる瞬間でした。

 

 

生けるはずのスターチスが1本、捨てる枝に紛れていましたので「スターチスは?」とお伺いしましたら「あっ」と、とてもびっくりした表情をされ、拾って生けられました。
時には失敗してガッカリされることもあります。生けることだけではなく、花を通して色んな感情に出合い、自己表現することが大切な、素敵なことなのです。

 

 

 

 

バラの木が固いので『とても無理。鋏は使えない。』という仕草で鋏を持とうとされません。それでご一緒にハサミを持って切っていただきました。
こうすると、ハサミの振動からご自身で切られたという感覚を持っていただけます。
鋏の使い方は甦り易い動作である為、何度か繰り返すうちにお一人で切られるようになられることがあります。

 

 

鋏が見当たらず、手で花を折っておられました。また、右手にも左手にも沢山の花を持って同時に生けられました。「何本も同時に生けたいのですね?どうしてですか?」とお尋ねしましたら「似たもん同士やから。」と仰いましたので「両手で出来たら凄いですね!」と周りの方と応援しました。
こうでなければ生けられないと思うことより、鋏が無くても切れる、思いのままに生けてみる行動は良いことです。方式に囚われず、大好きな花を自由に楽しんでみる取り組み方で良いのです。
喜びは意欲を保つ助けとなり、免疫力を高めます。

 

 

    

 

 

捨てる枝として切り落とした枝を生けられたり、側にあったガムテープのくぼみに生けられたりすることもあります。誰も気付かないところに目を向けられたり、思いも付かない点に関心を寄せられることはその方らしさなのです。 その時々の気持ちや思いつきは感性であり個性の表れです。

 

 

この方は、いつも初めに「下手くそで恥かしいです。今日で最後にします。」と仰います。
上手に生けることが目的ではなくご自身の尊厳を感じていただきたいので「お上手ですよ。」というお声はかけずに「お顔が見られて嬉しいですよ。一緒に生ける時間が楽しみなんですよ。」とお伝えしますとニッコリ笑って下さいます。
貴方の存在が素晴らしいということを分かっていただきます。

 

 

「お花は習ってないから…」と自信のない顔をされますが、その不安を感じることも大切です。
不安を取り除くことではなくて、ゆっくりでもご自身に生けていただくことで、満足感や達成感を感じていただけます。できないであろうと決め付けず、今できることで取り組んでいただきます。

 

 

   

 

 

生けられないこともあります。「何でここにいるの?生けたくないからね!」と仰るばかりでした。それで「無理に生けなくてもいいですよ。一緒に他の人のお花を見てみましょうか。」と手を繋いで花を鑑賞しました。「これは好きじゃない。この生け方は立派やね。」と一つずつの感想を仰って下さいました。
花を見たり、香りを嗅いで下さるだけでも脳は活性化しますし、他の方とコミュニケーションを取ることも大切な機会です。
生けることに気持ちがのらない時は、別の角度から楽しみ方を見つけたり刺激を受けていただけたらと思います。

 

 

ニゲラの細い茎がなかなか刺せないので「あーもう嫌い!肩凝るし手が痛い!」と癇癪を起こしてニゲラを投げつけられました。
そこで「ごめんなさい」と花になってニゲラの花の頭を下げて腕に寄り添い、少しずつ顔の辺りまで花をスリスリと近づけていきますと、にっこりとして花を抱きしめて下さいました。
上手く出来ずに癇癪を起こされましたが一生懸命の裏返しです。
感情を爆発させても、発散させることは悪いことではありません。

 

 

  

 

 

頑張って硬い槙を切っておられましたが、切れなかったのでお隣の方がお手伝いして下さいました。言葉が話せない方ですが、切って欲しい部分を指で示して枝を持ち、鋏で切って貰う共同作業を暫くしておられました。
いけばなの時間は言葉の会話が必ずしも重要ではなく、手や目で心を伝えることでも同じ花を感じることは出来ます。非言語的コミュニケーションであっても心が潤う時間です。

 

 

今日の1番お気に入りの花は菊ということなので理由をお伺いしましたら「ここで頑張ってる気がするから。」とのことでした。花から生きる意欲を感じて頂きたいと思います。

 

 

 

 

「カスミソウの蕾はこれから咲きますよ。」とお話をしましたら「こないだの花も、よう持ちましたわ。」と教えて下り、水を変えてお部屋でお世話をしている事を話して下さいました。
お花を生けた後もお部屋で責任を持った行動が継続していくことは生きがいに繋がります。

 

 

プライバシー保護の為、お手元だけの写真ですが、本当に嬉しそうな、くったくのない笑顔や
楽しそうにお話中のお顔、真剣に花を見つめるお顔の数々…
これをお見せできたら、どんなにいいだろうというお顔付きの写真が沢山あります。

お顔を見ていただくことができず、本当に残念です。

*写真はエリシオン学園前様実施内容で、展示の許可をいただいております。

 

 

さて、写真を額に入れて、養生テープで留めてバッチリ、展示完了!と思いきや、展示にはひと苦労💦 となりました。翌朝、写真が全部落ちていたのです。  …全部って…ガーン😫

慌てて、押しピンに変更する為に買いに走りました。

…市役所のロビーって6時半過ぎると暗くなるんだった…😫何か不器用だ…

何かがっくりしながら帰りました。 明日は落ちてませんように。

 

そんなこんなで開催させていただきました、この写真展。

 

 

 

一緒に花を生けて過ごす中で、私自身も様々なことを学んできました。
人と向き合うということに言葉はいらないということ。
心からの微笑みで本当に心が通じるということ。
生きるということは自分の価値を感じるということ。
自分でない誰かがそれを感じていても、そこにその方の尊厳が生まれているということ。
こんなことが、お伝えできると嬉しいです。

 

認知症の人への親しみに繋がり、認知症の人の勇気になれば幸いです。

 

RUN伴のゴールイベントでの花タスキも頑張っていきます!!花タスキも、お楽しみに!!